出会い系 サクラ

サクラと知ったのは・・・

結婚して20年がたつ40代のサラリーマンです。子供も2人います。浮気どころか風俗にも行ったことがない「優良亭主」でした。そんな私を狂わせたのは実の父でした。母が死んで8年。独りで淋しいのは理解できますが、大金を使って出会い系で若い女と遊びまくっていたのです。

 

それを知ったのは父の死ぬ間際でした。もともと仲が悪かったので、私は実家に年に1回帰るかどうかでしたから。具合が悪くなった父を見つけてくれたのは、お弁当を配達に行った人でした。重い肺炎でそのまま入院。仕方がないので私は、実家に帰っても決して入らない父の部屋に入ったのです。そこは想像以上に散らかっていました。床にはゴミや小銭、何かの錠剤や封筒などで足の踏み場もありませんでした。

 

下着やらタオル、パジャマなどを探していたら、嫌なものを発見してしまいました。それはメモ用紙に殴り書きされた文字でした。「ユリ 池袋 13時」とか「サキ 新宿 7万円」とか。最初は何のことか分かりませんでしたが、同じ場所に落ちていた銀行ATMの控えを見てピンときました。

 

親父は女を、それも若い女を買っているんだと。その頃の私は会社の業績も悪く、ボーナスの支給も止まっていました。子供たちの教育費もかさみ、毎月3万円の小遣いでなんとかやりくりをしていました。それなのに。父は出会い系で若い女を買いあさり、湯水のようにお金を使っていたのです。

 

私の中で、何かがプツンと切れました。ゴミ屋敷みたいな家の中から現金を探し出しました。3時間以上探したら9万円近く集まりました。父に対して後ろめたい気持ちは微塵もありませんでした。むしろ、私の遺産になるであろうお金が、放っておいた間にその大半が失われてしまったのですから怒りすら湧き上がりました。病院に行き、父に必要なものを届けると私はすぐに帰りました。家にではなくゴミ屋敷みたいな実家にです。

 

「親父が心配だし、家の中も掃除しなきゃならないし、今夜は実家に泊まるから」妻には嘘をつきました。初めて出会い系サイトというものを利用してみました。勝手がわからないので、実年齢よりも少し若く書いたり、年収も少し多めに書いてみました。それが良かったのか、次から次へとお誘いのメールが届きました。その中の1人、シングルマザーの29歳の女性と意気投合して、実家の最寄りの駅で会う約束をしました。

 

かなり意気込んで、指定されたドラッグストアの前に1時間近く立っていましたが彼女は結局現れませんでした。少し語気強く「待ったのになぜ来なかったんですか」とメールをすると、「もう少しお互いのことを知ってから会いたい」と返信が来ました。散りゆく夜桜を見ながら、私は寂しくタバコを吹かしました。季節が過ぎて葉桜の緑が目に眩しく感じます。あれはサクラというものだったのだと気付き苦笑いしました。今では文面でサクラかどうかを見抜けるまでに成長しました。